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NFL Week 14 トピックス

「今年の新語 2022」 大賞「タイパ」

ユーキャン新語・流行語大賞」ではありません。出版社の三省堂が主催する、今後、辞書に載ってもおかしくない「今年の新語 2022」の大賞に選ばれたのが「タイパ」です。初めて聞いた時は何のことだか分かりませんでしたが、「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略、時間的な効率のことだそうです。「コスパ」(コストパフォーマンス、費用対効果)に倣った造語です。若者の動画倍速視聴のような「時間の節約」現象を指す言葉で、選考会は「世の中は活字文化から動画文化へ移行し、その時代を生きるためには、タイパの向上が不可欠になるかもしれません」とコメントしています。

 

NFL GAME PASS はタイパのお手本

そう言われて気がついたのは、私がいつも視聴している NFL GAME PASS がまさしくタイパです。

NFL GAME PASS ホームページ

NFL GAME PASS は、NFL のプレシーズン、レギュラーシーズン、ポストシーズンの全試合をサブスクで視聴できるサービスですが、上のホームページ画像から分かる通り Week ビッグプレー60分ダイジェストとか、1試合5分のハイライトや、1試合の全プレーを40分に濃縮したゲーム・イン・40'など、まさに「タイパの殿堂」になっています。このサービスは3年ほど前からスタートしており、私は当初からサブスクしています。タイパは何も今年から始まったわけではなく、そのニーズは以前からあって、徐々に意識され始めたということだと思います。

 

観たいゲームを選ぶとこのようなページになります。この試合だとフル・ゲーム・リプレイが2時間18分3秒かかるのに対し、ゲーム・イン・40'は文字通り39分58秒です。

 

ご承知の通りアメリカンフットボールの試合時間は、NFL の場合、15分クォーター4つの計1時間です。その間に2回のクォータータイム、1回のハーフタイムがあり、前後半で両チーム各3回のチームタイムアウトのほか、負傷者が出た場合などレフェリータイムアウトもあります。試合前にはセレモニー(コイントス)があり、NFL ではさらに2ミニッツ・ウォーニングやコマーシャルタイムアウト、ビデオ判定の時間もあるので、現地で観戦すると優に3時間はかかるゲームです。

 

アメリカンフットボール観戦で重要なのは「全プレーを見る」ことです。この競技はオフェンス、ディフェンスともさまざまなフォーメーションがあり、そこから展開されるプレーにも多彩なバリエーションがあります。プレーの1つ1つは3〜4秒、長くても7〜8秒で終わってしまいますが、その短いプレーの連続で成り立っています。コーチやアナリスト、選手が一体となって1プレーごとに相手の弱点を探し、その都度戦術を練って最適のプレーを選択し、相手を打ち負かす深い戦略性がアメリカンフットボールの醍醐味です。この点がサッカーやラグビーと異なるところです。極論になりますが、サッカーはゴールの瞬間、ラグビーはトライにつながるシリーズを見ればその試合がおおよそ理解できます。これに対し、アメリカンフットボールは試合を通じて全てのプレーを見ることで初めてそのゲームが理解できるのだと思います。サッカーがショートショートラグビーが短編小説だとすると、アメリカンフットボールは長編小説だというのが私の持論です。

 

ゲーム・イン・40'の素晴らしさは、1試合全てのプレーが40分で観られるタイパにあります。NFL 1試合は、両チーム合わせて100〜140くらいのプレーで成り立っていますが、これをフル・ゲーム・リプレイで全て見るのは、時間がいくらあっても容易ではありません。私のように毎日が日曜日で外出することも少ない年金生活者でも、ゲーム・イン・40'がないと全試合・全プレーを観るのは難しいのではないでしょうか。

 

最後に「コスパ」の話。

私はGAME PASS のサブスクに4回分割の各7,990円、計31,960円(2022シーズン)を支払っています。高いように思いますが、2022年はプレシーズン48試合、レギュラーシーズン272試合、ポストシーズン14試合の334試合開催されるので、全部観るなら1試合あたり96円ほどです。しかも各試合がフル・ゲーム・リプレイ、ハイライト、ゲーム・イン・40'、コーチズ・フィルム(プレー分析用スカウティング・ビデオ)の4つのパターンで見ることができます。もちろんライブも観られますが、各タイムアウトのコマーシャル時間も全て含まれ、それこそ3時間超の長丁場となるので、スーパーボウル以外はとても観る気になりません。

 

結論です。NFL GAME PASS のコンテンツはすごく充実しているので、アメリカンフットボールファンにとって決して高い買い物ではありません。なかでもゲーム・イン・40'は、究極のタイパです。

 

 

Week 14の印象に残ったゲーム

MIN(10-3)23 @ DET(6-7)34

MIN#8カーク・カズンズとDET#16ジャレド・ゴフの両ベテランQB同士のディビジョン対決。カズンズのパス425ヤード、QBレイティング124.5に対し、ゴフはパス330ヤード、QBレイティング120.7を記録し、両者ともに見事な空中戦を展開しました。

昨シーズン、DETとLAはQBの交換トレードを実施。LAに移ったスタフォードがスーパーボウルリングを手にしたのに対し、DETのゴフは3勝13敗1分(チーム成績)と惨憺たる結果、一時はヘッドコーチとの確執も噂されるなど苦しい状況でした。2022シーズンもWeek 8まで1勝6敗と厳しい立ち上がりでしたが、ゲームを重ねるうちにチームの一体感が高まり、Week 9 以降は4勝1敗と勝ち越し、QBゴフへの信頼感が増してきたように思います。そして、今週はディビジョン首位と好調のMINにも勝利し、チーム力が大幅にアップしていることを証明しました。

 

PHI(12-1) 48 @ NYG(7-5-1)22

今季好調のチーム同士の対戦でしたが、終わってみれば大差がつきました。両チームのパンターに珍しいプレーがあったので記憶に残るゲームとなりました。

NYG#6Pジェイミー・ギランは、ロングスナップされたボールが確保できずに地面に落とし、そのままドロップキックのようにキックしました。イリーガル・キックの反則。10ヤード罰退、ロスオブダウン。4thダウン・パントなので、その地点でターンオーバー、相手方の攻撃開始。長年アメフトを見続けていますが初めて見た反則プレーです。

一方のPHI#8Pアリン・サイポスはパントがブロックされたので自らのそのボールを拾い、果敢に前進を試みましたがタックルされあえなくボールデッド。それで負傷してその後のプレーに復帰できません。なので、#4Kジェイク・エリオットがピンチ・パンターとして生涯2度目の慣れないパントを蹴っていました。パンターやキッカーは各チーム1人しかいないのが普通なので、ゲーム途中で負傷すると大変です。

 

その他 LA と SF

LA と SF の両チームは、どちらもエースQBが負傷して出場できないので、CAR が放出したQBベイカー・メイフィールドをどちらが獲得するのか Week 14 直前に話題になりました。

結局、LA が#17メイフィールドを獲得し先発起用、SF はルーキー#13QBブロック・パーディーを先発させ、Week 14は両チームとも勝利しています。

 

ブロック・パーディーはアイオワ州立大学でカレッジフットボールをプレーし、今年(2022年)のNFLドラフトで49ersに最終指名されて今年のミスター・イレバレントになりました。ミスター・イレバレント(「無縁」「無関係」の意)とはドラフトで最後に指名された選手に与えられる(あまり名誉とは言えない)ニックネームです。しかし、そのようなニックネームとは裏腹に、パッシングスキルが非常に高く、この試合でも素早い判断力とスピーディで安定した投球動作、優れたポケットワークを見せつけました。有馬隼人さんが「次代のブレイディ」と激賞するのもむべなるかなと思います。現状では今シーズンのルーキーQBNo.1と評価できます。ただし、この試合でパーディーも負傷したようなので、残り試合に同様の活躍が見られるかどうかはわかりません。

 

一方のベイカー・メイフィールドは、私は従来から個人的に全く評価していません。オクラホマ大学でカレッジフットボールをプレーし、パーディーとは対照的にその年の最優秀選手に与えられるハイズマン・トロフィーを獲得、2018年NFLドラフトで全体1位指名されクリーブランド・ブラウンズに入団します。その後4年間ブラウンズでスタートQBとしてプレーしますが思うような結果を残せず、2022年カロライナ・パンサーズにトレード。そこで7試合(うち6試合先発)に出場しましたが、1勝6敗と振るわずここでも放出の憂き目に遭っています。プレースタイルはパーディーと正反対で動きが重く、判断も遅いように感じます。

この2人のクォーターバックのプレーに今後も注目したいと思います。